花咲爺覚え書き

花さかじいさんの犬の名前は「ポチ」ではない?(Excite Bit コネタ)

  • 二葉亭四迷作「平凡」(1907)に登場する犬の名前は「ポチ」。
  • 「♪裏の畑にポチがなく」で始まる童謡「花咲爺」(石原和三郎作詞)の発表は1901(明治34)年(「幼年唱歌」初編下)。
  • 巌谷小波『日本昔噺 第五篇 花咲爺』(1894)では犬の名前は「四郎(シロ)」。
  • Yei Theodora Ozaki訳『Japanese Fairy Tales』(1908)収録の「The Story of the Old Man Who Made Withered Trees to Flower」では犬の名前は「Shiro」。「体の色から名付けられた」とあるので「白」であろうと思われる。
  • 「花咲爺」の翻訳は1885(明治18)年にちりめん本『Japanese Fairy Tales Series』の一冊「The Old Man Who Made the Dead Tree Blossom」(David Thompson訳)として翻訳されたのを始まりとする。その際犬がなんと呼ばれていたかは不明。
  • 民間に伝わる「花咲爺」の原話では犬の名前は明らかにされないものが大多数。ただし「白犬である」とされている場合が多い。
  • 江戸期の「赤本」における「花咲爺」の類話では犬の名前は明記されていない。

とりあえずの結論としては、従来の口承民話としては「名無しの白犬」もしくは「犬の『白』」であったものが、唱歌の歌詞に「ポチ」が採用され、初等教育の現場において「犬の名前は『ポチ』」として教えられるようになったために、徐々に「シロ」に代わって「ポチ」が一般化していったのではないか、と思われる。