イラク邦人拉致事件について

日本という国が、最終的には日本人を守ってくれるというのは単なる幻想に過ぎない。
日本という国が最終的に守るもの、それは「日本」という国自体だ。
かつては、「国体」という代名詞で呼ばれたある一人の個人を守るために、何万人という人が死んだ。
今の日本が守ろうとしているのは、曖昧模糊とした「国益」という名の幽霊に過ぎない。より端的に言えば、「国益」というより「利権」というべきか。
もっと端的に言おう。イラクで拉致されたのが、フリージャーナリストやボランティア活動家ではなく、政治家や大企業関係者、その子供や親であったら? その時でも、政府は今と同じ態度でことに望むであろうか?
要するに、一般の国民が何人死のうが、政府にとっては痛くもかゆくもないのだ。かつて国土に原爆を二発も落とされても戦争をやめなかったように。国民の死は、政府にとってはたかが一人分の税収が減るという程度の損害しか与えない。
さらに暗然たる気持ちにさせられるのは、そうした政府を支持してきたのは、(今の政府の対応を批判している人をも含めて)我々日本人自身であり、そして我々は今後ともこの政府を支持し続けていくだろう、ということだ。